改めて「日教組集会・会場使用拒否」問題の考察
今回の「事件」について、新聞各紙では一斉に「集会の自由」が脅かされる事態としている。それに対し、一部のブログでは、「集会の自由は憲法21条にあるが、そもそも国(公共)対私人に対してであり、私人間で当てはめるものではない」との疑問を呈し、中には私人間効力に関わるもので「三菱樹脂事件」の判例まで持ち出しているブログもあったりした。まずは、その辺を考えてみよう。
確かに、以前の記事で読売新聞の社説に「概ね同意」と書いた。ただそれは、「筋の通らない理屈で解約を正当化してまで集会を中止」された事への憤りに認識の一致を見たものであった。それでも、(朝日新聞でもそうだが)「集会の自由」を根拠に持ってきたところで、どこか引っ掛かるものを感じたのである。確か、憲法の規定は「公対私」を基本として、私人間への適用は果たしてできるのか・・・・と。
そんな中で、三菱樹脂事件を例に持ち出したブログがあったので、この事件を調べてみた(参照:ウィキペディア「三菱樹脂事件」)。この事件は、「思想・信条の自由」と「企業の経済活動ないし営業の自由」という、双方の基本的人権が対立する形で起こったものだが、最高裁の判断では「民法をはじめとする私法関係においては、民法等の規定を解釈するにおいてその趣旨を読み込むことも不可能ではないが、人権規定は私人相互間には原則として直接適用されることはない」という、いわゆる「間接効用説」を採ったものとしている。今回のプリンスホテルの措置に当てはめるとすれば、ホテル側が日教組に対し会場使用を断った事が、即ち集会の自由を侵害するものとは直接言えるものではない、という事になる。
このように、私人間での基本的人権の対立の事例となると、即座に「憲法違反」とはならずに、民法等の法令の準用という形が採られていことがほとんどである。同じような例で、いわゆる「昭和女子大事件」や「日産自動車事件」もある。また、今回問題にもなっている「集会の自由」に関しては、「泉佐野市民会館事件」というのがある。
この「泉佐野市民会館事件」は、今回の事例とは逆に?、いわゆる中核派系団体が市民会館使用を断られた件について、「明らかな差し迫った危険がある場合が具体的に予想できる場合に、集会の使用不許可をすることができる」との判断を最高裁で示している。
しかし一方で、「主催者が集会を平穏に行おうとしているのに、その集会の目的や主催者の思想、信条に反対する他のグループ等がこれを実力で阻止し、妨害しようとして紛争を起こすおそれがあることを理由に公の施設の利用を拒むことは憲法21条の趣旨に反するとしており、教職員組合が集会を開くに当たって右翼団体による街宣が来るからといって、安易に会館使用の不許可をすることまでは許容していない」との見解もある。
今回の事例で照らし合わせるとすれば、泉佐野市の例では主催者側に明らかなる騒擾の予見が見受けられ危険予測が明白であったために使用不許可になったが、プリンスホテル側の措置においては、危険予知があったといってもそれは「第三者」たる右翼の街宣行動であり、日教組という「一私人」そのものが明白なる危険を冒す「私人」ではないとの判断で、過去にも最高裁はいずれも、使用不許可処分当の措置を違法としているものである。
そして、ここからは私見になるが、例えば先に挙げた「間接効用説」を採って見てみると、日教組側がむしろ騒擾を起こそうとして会場の使用を求めた訳でなく、第三者の妨害行為によって明白な危険があったとしても、当事者間においては民法にある公序良俗の原則(90条)とか信義誠実の原則(1条)、権利濫用(同)、あるいは不法行為(第709条)などの規定を当てはめてみると、決して契約解除に至るような事情や、「当事者間同士」で契約解除に至るような合理的理由は見受けられないと思うものである。
むしろ、今回の事例において「憲法違反と取り上げるのはナンセンス」だとか「使用拒否の原因は日教組にあり」とか、したり顔で語ることこそ、私が憤るものである。「日教組も、なぜ街宣右翼に糾弾されるのかを、いい加減真剣に考えた方が良いと思う」とか語られても、そんなのはいじめっ子が「いじめはいじめられる方に原因がある」といってるのと同じですよ。今回の場合、明らかに問題をややこしくして「揉め事を作って」いるのは、街宣行動を行なっている右翼団体の方々なのに。
最後に、付け足すように言いますけど、あくまでも日教組を庇うものではありません。ただ、「日教組おかしいだろ!」と思うことより、一般市民のたちから見ても明らかに迷惑でかつ威圧的・暴力的な街宣行動について、「不法行為」を棚に上げるように「日教組が悪い」「やつらこそ日本の癌」と語ることに納得が行かないものであります、念のため。
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